全然関係ないことで
今朝3日目となる濃いぃカレーライスを食べていたら、向かいで妻がポツリ「思い出すね。」と言いました。
私はしばらく続きの言葉を待っていましたが、妻からの続きがなかったので、「何が?」と問い掛けましたが、それでも妻は何も言いませんでした。
「たぶん昴のことだろうな。」と思いましたが、その時に昴を思い出す心当たりがなかったので、静かに妻を待ち続けました。
1分ぐらい食べながら待ったでしょうか。妻はようやく、「さっきのお父さんの灰皿の姿を見とったら・・」と言ったまま、唇を震わせて涙ぐみ始めました。
私はまったく見当がつきませんでした。
しばらくの間涙ぐんだ後、妻が話し始めました。
その少し前、居間で使っているお気に入りの灰皿が満杯になったため、私は中の吸い殻を台所の可燃ごみ箱へ捨てようとしました。ところが、灰皿の本体とフタの建てつけが悪くなっていて、フタが取り外せなくなり、私は灰皿を抱え込んで中腰になり、思いっきり力を込めて「ウオー!」と声を出して、必死の形相で灰皿のフタを回して開けていました。結局開かずじまいでしたが。
妻は後ろから私のその姿を見ていて、「昴が心肺停止になったときの、お父さんを思い出してしまった。」とのことでした。妻は、そのまましばらく泣いていました。
私はそれを聞いて、「全然関係ないやーん!」と妻へ言いました。
でも、私には妻の気持ちが痛いほどわかります。私も何気ないひょんなことで、すぐに昴のことを思い浮かべますので。
「あの時の生々しい壮絶な記憶は、できる限り思い出さんようにしとるんやけどね。」
「俺もそうやわ。」
「でも、一周忌が近づいてくると、どうしても思い出してしまうなー。」
「そうやね。」
本当はもう少しその話を続けたかったんですが、朝の準備がありましたので、その話はそこで終わりとなり、私も妻も日常生活へ戻っていきました。
空がとても澄んでいて、朝日が眩しいさわやかな通勤途中の朝です。