昴が・・
午後の喉元の手術が終わり、さあこれからだというところで、突然機器の心拍数表示が0になりました。
機器の故障か?
緊急ボタンでナースを呼び、私たち家族は病室の外に出させられました。しかし、カーテン越しに見えてきた光景は、医師が電気ショックらしきを当てている姿でした。ボンっていう音も聞こえました。
えっ! 昴が死ぬ?
その時初めて、昴の死を意識しました。
病室に戻ってしばらくしては機器が0になり、またナースボタンを押して外に出され。
3回電気ショックを繰り返したところで、病室に戻った私たちに、医師が言いました。
「これが最後。」「これ以上続けても、体がボロボロになるだけだ。」
心拍数は100ぐらいまで戻りましたが、またすぐに落ちてきました。
昴が死ぬはずがない。
兄弟の誰よりも頑丈な体なんやで。車とぶつかったぐらいで。
恐る恐るモニターの数字が下がるのを見ていましたが、心拍数が18まで落ちたところで、もう我慢ができませんでした。
私がこの手でマッサージすれば、生き返るに違いない。
だから、私は昴の体の上から、思い切りぶ厚い昴の胸を何度も何度も押しました。
どれぐらい押し続けたかわかりませんでしたが、振り返ってモニターを見たら、0になっていました。
私は家族に言いました。
「もう、あきらめよう。」
昴が息を引き取りました。
他の手術に入っていた執刀医の確認を待って、昴の死亡を宣告されたのは、夜の7時41分でした。
それは、長い長い私たち夫婦の1年の始まりでした。
今日はたくさんの方々が、昴に会いに、そして私たちを励ましにうちへ来てくださり、ラインをくださったり、電話をくださったりしました。
きくち部長とかずちゃんも来てくださいました。やないさんも来てくださいました。今日大安中学校では、生徒会の主催で、命の授業が行われたそうです。
我が子を亡くすって、本当に悲しいことです。この1年間、私は昴のことが一時も頭を離れることはなかった。ひたすら、昴の死と向き合ってきた。それしかできなかった。
昴の死の意味なんて、まだまだわかりません。
でも、この1年、昴の死と向き合い続け、昴の死の意味を問い続けてきたそのおかげで、私はすごく大事なことに気づかされました。
自分と家族のことだけを考えているだけではいけない。
そのことを、できる限り多くの方々に伝えていかなくてはならない。
昴が亡くなって、悲しくて悲しくてしかたがありません。昴、生きていてほしかったよー。たぶん、この堪えようのない悲しみは、いつまでも収まることがないと思います。
それでも、昴の死に向き合うことで、大事なことに気づいた。そうやって思えることで、悲しみを覆いかぶすしかないんですね。
きくち部長とかずちゃんに、私の気持ちを素直に打ち明けました。
あれだけ祈っても、生還は叶わなかった。
でも、生還を祈り抜き、昴の死と向き合う中で、昴が私にすごく大事なことを教えてくれた。そういうことなんですね。